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郷土の心を舞う Team-MINOCHI sinto ritual dance and musicic

 「長門彦島」創作神楽の製作日誌  

はじめに



 2012年、広島市佐伯区のイメージキャラクターとして「さえき景弘くん」が誕生しました。佐伯景弘とは、平安末期に権勢をふるい、厳島神社を造営した「平清盛」と親交のあった人物です。現在の広島市佐伯区はこの佐伯景弘をはじめとする佐伯氏の勢力下にあったとされています。

 「地域の英雄・佐伯景弘が登場する神楽の演目を創りたい」…そんな熱い想いに応えて水内神楽団では、佐伯景弘を主人公とする創作神楽「長門彦島」の製作に取り組んでいます。佐伯区にお住まいの神楽ファンの方に…いえいえ、もっとたくさんの皆さんに是非ご覧いただき、私たちの郷土“佐伯区”の魅力を知っていただきたいと思っています。

創作神楽「長門彦島」とは… 

■「長門彦島」〜物語〜■
 時は平安末期、平相国清盛亡き後、頼朝を中心とする源氏は平家討伐の兵をあげた。都を追われ、西国に堕ちていく平家に加勢すべく、清盛の庇護をうけた厳島神社の社主・佐伯景弘は、平家の後を追い、長門彦島まで駆けつける。そこで清盛の妻・二位の尼時子から平家の覚悟を聞かされ、清盛の残した厳島神社をまもるために断腸の思いで平家に別れをつげる。
 平家滅亡の後、鎌倉から、時子・安徳帝とともに壇ノ浦に沈んだ宝剣「草薙の剣」を探し出すよう命が下り、景弘もこれに加わるが、宝剣を得た海神龍王の抵抗にあい、難攻する。ここに厳島明神・市杵嶋姫命が降臨し、景弘を助けて宝剣を取り返す。
 しかし景弘は「この剣にこそ清盛の魂あり」と、剣を鎌倉に差し出さず、市杵嶋姫命に捧げる。姫は宝剣を持って昇天し、後に頼朝の夢枕に立って景弘の功績を告げたと伝えられる。

■人物・地名■
 長門彦島 長門彦島は壇ノ浦合戦の際、平家一門が本拠地として陣を敷き、要塞としての役割を果たした島。難攻不落、天然の要塞と言われた。
 佐伯景弘 平清盛に仕え、その家人として活躍する。清盛の厳島神社支援に対し、景弘は神社経営に関与し、清盛から平氏姓を名乗ることを許された。また、源氏との戦いでは一貫して平氏を支持した。1185年に壇ノ浦の戦いで平氏は滅亡したが、景弘は新たに台頭した源頼朝に接近、その後も神主の役職にあり続けた。1188年には頼朝の命により壇ノ浦で安徳天皇と共に海中に沈んだ宝剣「草薙の剣」の捜索を行ったが、宝剣のありかを知りながら報告しなかったとも伝えられる。 
 二位の尼 平清盛の妻であり、安徳天皇の祖母。清盛の死から平氏滅亡まで一門を統括した。源氏との戦いで一貫して平氏を支持し、彦島まで参陣した景弘に撤退をすすめ、清盛が信仰した厳島神社を託した後、わずか8歳の安徳天皇と宝剣「草薙の剣」を抱いて入水する。遺体は宮島の有の浦に漂着したとされ、手厚く葬られたと伝えられる。
 市杵嶋姫 厳島神社の祭神。弁財天と同一視されている。創作神楽「長門彦島」では、二位の尼の遺体が有の浦に漂着するとその体に乗移り、景弘を助けて宝剣を奪回する神として登場する。景弘から宝剣を託されると、頼朝の夢に立ち、景弘の功績を告げることで、神官としての地位を守ることを約束する。
海神龍王 壇ノ浦合戦の際、安住のすみかを汚され、怒り狂う龍王の姿として描いている。入水した二位の尼から宝剣を奪い取り、その遺体を宮島へと流す。また宝剣探索の際には悪龍となって抵抗する。

平家一門… 取材記録

 勧善懲悪の神楽の世界では、いわゆる「悪」として登場することの多い平家一門
 よく知られる演目「壇ノ浦」では、清盛の四男・知盛が碇をかついで入水した後、亡霊となって出現するなど、恨みを抱いたまま滅亡したというイメージが強いです。

 「長門彦島」では、この平家に味方し、最後まで平家方として奔走した佐伯景弘が主人公として…まぁつまりは勧善懲悪の「善」として登場します。
 だとすると、平家にはそれなりに魅力があったということではないでしょうか。

 平家の魅力とは何ぞや??? 清盛も当時としてはかなり魅力的な人物だったとは思いますが…。

 下関へ行ってみました。
 赤間神宮というところがあって、安徳天皇の墓所やら平家一門の墓やらが今に保存されているとか…
 訪ねてみました。

      
 左は「水天門」。安徳天皇が死後竜宮に入ったという言い伝えに基づいて作られたそうです。
 そして右が平家一門の墓所。というか、供養塔かな。
 「長門彦島」に登場する二位の尼平時子の供養塔もありました。

 こういう神社に平家の名が残っているってことから考えても、平家一門が滅亡後も西国で大切にされて続けてきたということかな、と思いました。

 そんな平家一門の、「末代まで名を残す」という誇りを物語の土台とした「長門彦島」。その誇りを受け継いだ佐伯景弘の活躍を、さて、「神楽」という型の中でどう描くか…。

 毎回、試行錯誤しながら練習しています。

衣装・小道具・神楽面  10月12日地御前大歳神社先行公開より

佐伯景弘
 清盛よりも年上で重厚なイメージのある景弘は、黒の狩衣金襴飾りの太刀を持ち、平安高烏帽子を着用して登場します。また狩衣は肩切仕立てになっており、海神龍王との合戦場面では平家カラーである「赤」を基調とした衣装に早変わりする仕掛けになっています。
厳島明神 市杵嶋姫命
 厳島神社の祭神・市杵嶋姫命は、凛とした女神らしく飾り紐のついた前天冠をつけ、白い水干赤い袴を着用します。また、宝剣「天群雲剣」(あまのむらくものつるぎ・後の「草薙の剣」)を八岐大蛇の体内から取り上げた勇猛な神・須佐之男命(スサノオノミコト)の娘として、御幣をつけた緋色の長刀を持って登場します。
二位ノ尼 平時子
 物語の鍵となる平家の滅亡。一門の要(かなめ)として滅亡の道を選んだ清盛の妻・平時子は、壇ノ浦と瀬戸内の海をイメージした波模様の格衣(かくえ)尼頭巾をつけ、幼い安徳帝を抱いて登場します。雲柄の袴は入水して果てた後の魂の昇天をあらわします。
海神龍王
 壇ノ浦の深海に住む龍王は怒りの形相で登場します。怪蛇・八岐大蛇の末裔のようなイメージで竜の顔をモチーフとしており、また、平家を滅ぼす悪魔のようにも見える表情です。武器として三つ又鉾を持ちます。

    
  物語の核とも言える宝剣「草薙の剣」鞘に螺鈿飾りのついた豪華な太刀としました。

  これらの衣装や小道具、神楽面の完成は、ひとえに制作者の皆様のご尽力によるものです。
  皆様の熱意ある作品に応えるためにも、よい神楽に仕上げたいと思っています。
  本当に、ありがとうございます!

写真集 


窮地の平家に加勢するため、長門彦島へ…

滅亡の道を選んだ二位ノ尼。景弘に撤退を勧めます。

厳島神社を託され、平家と袂を別つ景弘。

辞世の句を残し、宝剣「草薙剣」と共に身を投げます。

安住の地を荒らされ、怒りあらわに海中から現れる海神龍王。

二位ノ尼の遺体から宝剣を奪い取ります。

宝剣を探索する景弘の前に降臨する市杵嶋姫

神の威徳を得て龍の住処を探り当てます。

激しい戦いの後…

宝剣を取り返し、神に捧げる景弘。

神は景弘の功績に感じ入り、宝剣を持って昇天し…

佐伯一族は厳島神社の社主として繁栄しました。
          写真は物語に沿ってご紹介しています。(写真提供/konishiさん・katouさん)


水内神楽団 団長/西 泰彦

〒738-0601
広島県広島市佐伯区湯来町和田

TEL 090-1012-4787(団長直通)
※出演依頼は団長直通の電話番号までお願いいたします。